海上保安庁は昭和23年5月の創設以来、日本の海の平和と安全を守ってきました。海上保安庁の創設を記念して、初代長官である大久保武雄氏が庁舎屋上に海上保安庁の旗である庁旗を初めて掲揚した5月12日が「海上保安の日」と定められ、この日を初代長官大久保武雄氏が俳人(俳号;橙青(とうせい))であったことにちなみ、昨年に続き、第2回「海上保安の日」俳句コンテストを開催いたしました。 応募部門を一般の部と高校生以下の部、応募期間を令和2年12月1日(火)~令和3年3月1日(月)までの3か月間として募集し、一般の部2,638句、高校生以下の部1,122句、総数3,760句の投句がありました。
これを9名の選者が選考し、大賞(橙青賞、海上保安庁長官賞、海上保安協会会長賞:一般の部3句、高校生以下の部5句)、特選(一般の部9句、高校生以下の部6句)、佳作(一般の部58句、高校生以下の部56句)の作品が決定しましたので、お知らせします。
大久保 白村 審査委員長、(公社)日本伝統俳句協会顧問
稲畑 汀子 (公社)日本伝統俳句協会会長
大串 章 (公社)俳人協会会長
中村 和弘 現代俳句協会会長
冨士 眞奈美 俳人、女優
夏井 いつき 俳人
岸 ユキ 海上保安友の会理事、女優
稲畑 廣太郎 (公財)海上保安協会評議員、(公社)日本伝統俳句協会理事
佐藤 雄二 元海上保安庁長官
橙青賞(初代海上保安庁長官 大久保武雄俳号)
難破船へ挑む寒波の海保ヘリ/ 徳島県 井上 辰登志
選評(稲畑 汀子)
海上保安ヘリコプターは寒波に難渋する難破船を助けに果敢に挑む。背景に感謝の心が滲む。
選(岸 ユキ)
海上保安庁長官賞
島国をまもり抜く船夏の雲/神奈川県 友常 甘酢
選評(冨士 眞奈美)
日本は北海道から鹿児島、沖縄まで細長く、海に囲まれていますから、この国を守るための力の結集というものは大変なことだと、その日々の御苦労に感謝いたします。沖縄の102歳の方からも俳句、頂戴いたしました。期待と感謝で一杯のお気持ちです。私は地球儀を見つつ、選句させていただきました。
選(稲畑 汀子)
海上保安協会会長賞
五月凪守る国境あのあたり/東京都 沼田 慎也
選評(夏井 いつき)
初夏を迎えた朝でしょうか夕暮れでしょうか。凪いだ水平線を眺めつつ、守るべき国境を凝視しているのでしょう。五月の凪いだ海は、あくまでも静かですが、目には見えない海原の国境を思う時、「守る」という言葉が今更ながら心に強く意識されるのでしょう。凪の静けさと国境の不穏に、五月の海は静まり返っています。
選(稲畑 廣太郎)
特選(各選者の特選句:順不同)
目に見えぬ境界守る海保の日/千葉県 上田 康彦
選評(佐藤 雄二)
そもそも海の上に白い線など引かれていない。領海線もEEZ線も見えないのだ。さらに、戦後七十六年経った現在でも、我が国の領海およびEEZの一部の境界線は、対岸国との間で未だに画定されていない。その見えない境界を守るのが海保の仕事だ。
吾子三才スマホでつなぐ尖閣の冬/北海道 山本 徳二
選評(岸 ユキ)
大変な任務の中スマホで家族とつながっている光景は胸にせまるものがありました。この作品を特選といたしましたが、あらためて海上保安庁の仕事の重要性、そして大変な中、使命感を持って挑んでいらっしゃるお姿に感動し、御家族そして国民一人一人にとっても海保の日の重さを知らされたひとときでした。
海を守る人の釦に初日さす/兵庫県 近藤 六健
選評(中村 和弘)
海彦、山彦と古来よりいわれてきたように海洋民族の血が濃く、海を大切にしてきた。海を守る人々は海上保安庁の方々とは限らないが、この句は海上保安庁の制服の釦でしょう。その釦に初日が差しきらりと光った。感謝の気持ちがこもる美しい句である。
海を守り海に護られ海保の日/山口県 小畑 律子
選評(大串 章)
「海を守り」に併せ「海に護られ」といったところが眼目。海上保安庁は昭和23年5月の設置以来、日本の海の平和と安全を守ってきた。その海は、領海の設定や魚介類の収穫など、長年にわたり我々の生活を支え護ってきた。
四方の海鎮めて五月十二日/ 滋賀県 小見 伸雄
選評(稲畑 廣太郎)
「海保の日」を俳句で詠む場合、新しい季題としては、これから徐々に認められて来るだろう。そんな中、今回も伝統的な季題を通して詠まれた句を選ばせて頂いたが、特選はずばり五月十二日という月日を詠まれたところに新鮮さを感じた。海に囲まれた日本の景色も美しく描けている。
僚艇の汽笛頼もし海保の日 /東京都 竹内 柳影
選評(大久保 白村)
汽笛で挨拶や連絡もあるのだろう。励まし合って任務を遂行されている。
海保の日大漁旗の船帰る/山口県 吉浦 百合子
選(大串 章、岸 ユキ、佐藤 雄二)
水尾太く薫風を航く海保の日/兵庫県 池田 雅かず
選(大久保 白村、稲畑 廣太郎、佐藤 雄二)
海図には潮の満ち引き海保の日/愛知県 田本 雅子
選(中村 和弘、夏井 いつき、佐藤 雄二)
異国船見張る彼方に虹光る/千葉県 上田 康彦
留守まもる妻へ敬礼海保の日/東京都 稲岡 俊一
一日の汗の重みの保安服/山口県 吉浦 百合子
天の川平和を願う海の上/東京都 村田 千賀子
天高し国境線の波高し /茨城県 早雲 茜
灯台へ野花の径を海保の日/ 東京都 村田 亘利
海保の日海を見てゐる漁師の子 /北海道 藤林 正則
夏帽子一糸乱れず海保生/兵庫県 小田 虎賢
ふんわりのセーター届く任地の夜/福島県 鹿目 栄八郎
コロナ禍の荒波を越え海保の日/東京都 内村 佳保
菖蒲湯に子と戯れん海保の日/東京都 梶浦 公靖
海護る気概を強く海保の日/奈良県 岩井 壮介
五月十二日デッキシューズの白さかな/東京都 伊勢 史朗
薫風や灯台好きな父と母/島根県 寺津 豪佐
鯉のぼり風をはらみし海保の日/宮城県 千田 康司
海保の日星座煌く大和堆/島根県 寺津 豪佐
海原や凪にて祝ふ海保の日/大阪府 安藤 知明
海保の日飛びかう鳥に語りかけ/群馬県 萩原 とき江
国境はみな海海上保安の日/東京都 曽根 新五郎
海鳥の群れて海上保安の日/岡山県 井上 幹彦
海保の日吾れ海の子として育つ/岩手県 高橋 秋郊
夏の海波高く見ゆ海保の日/愛知県 山本 晃
石垣島に真白き巨船海保の日 /大阪府 渡辺 美紀代
燈台も岬も標鳥帰る /長崎県 三好 勝利
ひなたぼこ父が語りしコンパス旗/埼玉県 中野 弘樹
海保の日凛凛しい彼に惚れ直し/静岡県 池谷 勝利
海青し燈台白し海保の日/和歌山県 岸 穆
巡視艇荒れる卯浪を越え赴かん /兵庫県 多木 頼子
海保の日人命救助の話など /和歌山県 川口 修
巡視船水尾太々と夏来る /和歌山県 山本 容子
髪ほどく潮の匂ひや海保の日/石川県 沖野 晶子
海保の日昭和平成令和継ぐ/兵庫県 西村 みどり
霾るや富士のマークの巡視船/静岡県 太田 依子
ラジオから異国の曲や海保の日/兵庫県 足立 有希
海に立つ防人思ふ海保の日/愛知県 井深 靖久
深海の色を問ふ子や海保の日 /群馬県 遠藤 幸子
夏雲へ描く航跡巡視船 /岐阜県 大島 奈津子
襟に染む潮のかおりや海保の日 /茨城県 鈴木 彩夏
海保の日登檣礼の白手套 /千葉県 八川 信也
星月夜海保の海のしづもりぬ /東京都 岡崎 実
夏霧や灯台守の今むかし /愛知県 山口 こひな
領海の任務を癒す星月夜 /兵庫県 池田 雅かず
潮騒が奏でる平和海保の日 /東京都 若槻 泰治
なつうみに跳ねる高速巡視船 /青森県 竹浪 誠也
祭日になればと海上保安の日 /兵庫県 近藤 六健
風光る海保の旗に背を伸ばす /静岡県 平野 小百合
水着着て初泳ぎかな海保の日/東京都 山﨑 芳美
領海に夕陽沈みて海保の日 /大阪府 高嶋 昌子
守り切る日本の海を海保の日 /東京都 小松 増美
海保の日雲母のごとく光る海 /愛知県 山田 由美子
巡視船月に重なりマストの灯 /千葉県 須賀 毅
海保の日海の平和に励む日々 /愛知県 野内 正義
防人の声が聞こゆる海保の日 /岐阜県 稲川 正幸
冬怒涛響く灯台長梯子 /東京都 花月 大師
防人の鼓動は永遠に海保の日 /愛媛県 半木 るん
父が乗る船に架かるは朝の虹 /大阪府 秋田 瑞穂
春の夜の波均すかに巡視船 /長野県 小口 俊晴
日本の海は安全海保の日 /東京都 曽根 新五郎
大賞
橙青賞(初代海上保安庁長官 大久保武雄俳号)
この海は地球の青さ海保の日 /神奈川県 石川 胡桃
選評(中村 和弘)
世界最初に大気圏外を飛行したガガーリンの飛行中の言葉に<・・・地球がよく見える、美しい地球は青い>がある。ガガーリンの感動がこもった名文句である。海の青さは地球の青さ、海を守ることは地球を守ることである。
選評(佐藤 雄二)
宇宙から見ると、確かに海の青さは地球の青さとなる。海保の日に改めてこの青さがいつまでも保たれるよう環境保全を願う句だ。
選(夏井 いつき)
海上保安庁長官賞
たてよこにウミネコの飛ぶ海保の日 /宮城県 横溝 麻志穂
選評(夏井 いつき)
海猫が自由自在に飛ぶ様子を「たてよこ」と表現した点が巧い作品です。その勢いや群れ飛ぶ姿などが映像としてありありと見えてきます。そんな海猫の様子から、空の広さ、海の広さを実感しているに違いありません。守るべき海のことをもう一度、考えてみる。改めて学ぶ「海保の日」でありますね。
選(中村 和弘、佐藤 雄二)
海上保安協会会長賞
海のことみんなで学ぼう海保の日 /鹿児島県 上山 夏音斗
選評(大串 章)
「海保の日」を契機に、海に親しみ海のことを色々学びたい。この句のほかにも「海保の日海を見つめる大事な日」「海保の日みんなで海に向き合おう」「海保の日考え直す海の事」などがあった。
選(大久保 白村)
海上保安協会会長賞
海に愛心に正義海保の日 / 神奈川県 山田 浩生
選評(大久保 白村)
初代長官大久保武雄の訓示を聞いているような作品。
海上保安協会会長賞
潮風と浜昼顔と海保の日 /鹿児島県 山口 真理奈
選(冨士 眞奈美、夏井 いつき、岸 ユキ、佐藤 雄二)
海上保安庁長官賞
たてよこにウミネコの飛ぶ海保の日/宮城県 横溝 麻志穂
選評(夏井 いつき)
海猫が自由自在に飛ぶ様子を「たてよこ」と表現した点が巧い作品です。その勢いや群れ飛ぶ姿などが映像としてありありと見えてきます。そんな海猫の様子から、空の広さ、海の広さを実感しているに違いありません。守るべき海のことをもう一度、考えてみる。改めて学ぶ「海保の日」でありますね。
選(中村 和弘、佐藤 雄二)
海上保安協会会長賞
海のことみんなで学ぼう海保の日/鹿児島県 上山 夏音斗
選評(大串 章)
「海保の日」を契機に、海に親しみ海のことを色々学びたい。この句のほかにも「海保の日海を見つめる大事な日」「海保の日みんなで海に向き合おう」「海保の日考え直す海の事」などがあった。
選(大久保 白村)
海上保安協会会長賞
海に愛心に正義海保の日 / 神奈川県 山田 浩生
選評(大久保 白村)
初代長官大久保武雄の訓示を聞いているような作品。
海上保安協会会長賞
潮風と浜昼顔と海保の日/鹿児島県 山口 真理奈
選(冨士 眞奈美、夏井 いつき、岸 ユキ、佐藤 雄二)
特選6句
海についてみんなで話す海保の日/鹿児島県 倉園 みちる
選評(冨士 眞奈美)
何十億、何百億という星が犇く宇宙の中の小さな星、地球。その地球の中の小さな島国である日本。天空から丸見えの美しい小さな島。頼りなげといえば本当にそう。住んでいる人々は、平和に、愛し合って闘いなど争いを起こさず生を全うしようと願い合っています。平和、安全、海を守る、という言葉がいっぱいでした。若人、子供たちの未来が明るい光に充ちたものでありますように。
猛暑でも海の安全ありがとう/千葉県 大砂 茉穂
選評(稲畑 汀子)
海の安全を守る人々へ特に猛暑をいとわず働く人々への感謝を素直に述べた秀句。
ゆらゆらとうみがつたえるあいことば/千葉県 小幡 美月
選評(岸 ユキ)
海はどんな合言葉を語りかけているのでしょう。時には牙をむけてくる海。そんな海にも果敢にいどむ保安官。この句ではゆらゆらとやさしい合言葉が聞こえてくるようでほっといたします。
海保の日今年も無事に初夏の海/東京都 蘆田 開
選評(稲畑廣太郎)
五月十二日の「海保の日」は立夏も過ぎた初夏のすがすがしい日ですね。その季節に海を見て海上保安庁の人々が毎日海を守ってくれていることに感謝しているすがたが明るく伝わってきます。
沿岸の津波の碑見る海保の日/宮城県 横溝 惺哉
選(中村 和弘、夏井 いつき、佐藤 雄二)
薫風に雄雄しき庁旗海保の日/兵庫県 武田 奈々
選(大久保 白村、稲畑 廣太郎、佐藤 雄二)